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公共施設マネジメントの先進事例10選|効果的な手法やポイントについても徹底解説

監修者

黒川 雅康

総務省 経営・財務マネジメント 強化事業アドバイザー

株式会社パブリック・マネジメント・コンサルティング/上席執行役員 営業部長
2008年当社入社。地方公会計制度導入、公会計システム開発・運用に携わり、
以降、自治体における財務書類作成、公共施設マネジメント等、地域・自治体の課題解決に向けた様々な支援を行う。

「各自治体の取り組みや先進的な事例を参考にしたい」
「公共施設マネジメントを成功させるためのポイントにはどのようなものがある?」

地方公共団体の担当者の中には、公共施設マネジメントを進めるにあたって、このような疑問をお持ちの方もいると思います。

本記事では、公共施設マネジメントの先進事例の内容や特徴について解説します。

また、それぞれの事例に共通するポイントについても合わせて解説しますので、公共施設マネジメントを推進する際の参考となれば幸いです。

1.公共施設マネジメントの先進事例10選

公共施設マネジメントとは、地方公共団体が保有する公共施設(学校、図書館、福祉施設など)を自治体経営という観点から、適切に管理・最適化する取り組みです。

特に公共施設の老朽化や少子高齢化、税収の減少などの要因から、地域や社会で求められるニーズが変化し、公共施設マネジメントの重要性が高まってきていますが、具体的にどのような取り組みを行うかについては、各地方公共団体の自主性に委ねられているため、公共施設マネジメントの取り組み実態については、地域などによっても異なっているのが現状です。

ここでは、自治体や地域によって、先進的ともいえる取り組みや事例をご紹介します。

  • 北海道|庁舎スペースの有効活用事業
  • 秋田県秋田市|文化施設整備事業
  • 東京都千代田区|合同庁舎・区役所本庁舎整備事業
  • 東京都新宿区|学校跡地の信託事業
  • 茨城県鹿嶋市|屋内温水プール整備事業
  • 千葉県習志野市|公共施設再生事業
  • 富山県小矢部市|統合こども園整備事業
  • 京都府京都市|学校施設の活用事業
  • 大阪府岸和田市|福祉センター整備事業
  • 福岡県飯塚市|小中一貫校の建設事業

(1)北海道|庁舎スペースの有効活用事業

本事例は、北海道が保有する庁舎のスペースを有効活用することで、運営コストなどの削減を図った事例です。

北海道では、財政難などを背景として、公共施設の長寿命化やライフサイクルコストの削減などを目的とする「道財政立て直しプラン」を2004(平成16)年8月に策定していました。

このプランには、北海道が保有する施設の共有スペースの有効活用に関する方針も盛り込まれており、その一環として推進されたのが本事例です。

庁舎の移転・集約を行うことで跡地の売却を行い、収支の増加と維持管理コストの削減を同時に図りました。

また、庁舎内の間仕切りを撤去してオープン化を実施し、執務空間と打合せ空間の最適化を図ったほか、民間公募による店舗の出店を促した点でも特徴的です。

これによって、スペースの使用料収入を得ることにつながり、財政難を解消する方向性を踏まえつつ、保有する庁舎スペースを多面的に活用することを実現した点でが特徴的な事例です。

出典:北海道「北海道ファシリティマネジメント推進方針について

(2)秋田県秋田市|文化施設設備事業

本事例は、秋田県と秋田市が連携して文化施設を整備する事業を展開したものです。

秋田県と秋田市はともに文化芸術の振興に関する施策を推し進めるにあたり、文化施設の整備に注力していました。

秋田県が運営する秋田県民会館は2013(平成25)年時点で築年数が52年を経過しており、秋田市が運営する秋田市文化会館も築年数が33年と、ともに老朽化や耐震性に課題がありました。

本事例では、県と市が2つの施設を統合した新たな文化施設の整備を計画し、連携協定を締結した上で具体的な整備事業を進めた点に特徴があります。

ほかに代替性のある施設や設備がないこと、事前に県民を対象とした「文化振興に関する県民・市民意識調査」の結果で80%を超える人が文化活動を大切と考えているという調査データを根拠に整備の必要性・重要性を示しました。

また、施設の整備地を駅や美術館などの中心地に定めることで、利用者の利便性を意識した計画となっています。

整備や運営管理のコストについても、県と市が共同で整備事業を行うことで、それぞれの施設の建替えを行った場合と比較してコストの縮減が図られている点も特徴といえます。

出典:秋田市「新たな文化施設に関する整備構想(平成25年度策定)

(3)東京都千代田区|合同庁舎・区役所本庁舎整備事業

本事例は、国と地方公共団体(東京都千代田区)が庁舎を合築し、整備した事例です。

国は九段合同庁舎について、老朽化や業務量の増大などを背景として、2001(平成13)年8月に整備計画を発表していました。

千代田区も区庁舎の建替え整備を必要としていたものの、仮庁舎の確保などに課題があったため、合同庁舎の整備計画を受けて、合同で整備事業を進めることを国に対して要望しました。

国の整備計画に地方公共団体が合同で進める旨の要望を行い、国と地方公共団体の建物を一体化して建て替え、国と地方公共団体が合同で整備事業を執り行うことで、双方の財源負担を同時に削減することができた点が特徴的です。

なお、千代田区が所有する高層階には区立図書館や食堂などが設置され、運営を民間に委託するなど、公共施設の複合化と官民連携による運営といった側面でも先進性がある事例です。

出典:国土交通省「九段第3合同庁舎・千代田区役所本庁舎整備等事業

(4)東京都新宿区|学校跡地の信託事業

本事例は、新宿区が保有していた小学校跡地を信託銀行へ信託した事例です。

対象となった小学校の跡地は、1990(平成2)年の段階で土地信託による活用が視野に入れられていたものの、バブル経済の崩壊によって実施が見送られていました。

しかし、長引く景気の低迷や財政の逼迫などを背景として、土地信託事業に踏み切り、2000(平成12)年に新宿区は土地信託受託者の募集要項を公表しました。

本事例では、新宿区が信託した土地について、信託銀行がオフィスビルを建設し、賃料収入から諸経費などを差し引いた金額を新宿区に毎年配当を行うことで合意がなされました。

財政難を解消するために公共施設を信託し、受託者である信託銀行が施設の管理・運営を行うため、直接的な経費の支出をする必要がなく、経費の削減も行うことができた点に特徴があります。

なお、区に調査権と監査権があるため、施設の運営が適切になされているか確認できることも信託というスキームが活用される理由として挙げられています。

これによって、税外収入を安定的に確保することにつながり、区民に対する行政サービスの財源として還元する流れを構築した事例です。

出典:新宿区「淀橋第二小学校跡地の土地信託について

(5)茨城県鹿嶋市|屋内温水プール整備事業

本事例は、老朽化していた複数の学校プールについて機能を集約し、新たな屋内温水プールとして整備を行った事業です。

5つの小・中学校に設置されている屋外プールは当時いずれも築年数が40年を経過しており、修繕コストや維持管理費用の負担が大きな課題となっていました。

そこで、学校および市の負担軽減を図ることを念頭に、5つの屋外プールを1つの屋内温水プールとして統合・整備する計画を策定しました。

なお、プールの機能集約化・統合の計画を進めるにあたって、学校、市、地域住民による検討組織を立ち上げ、周辺の学校などの児童、生徒、教員にもアンケート調査を実施しています。

また、単なる学校プールの統合にとどまらず、市民プールとしての側面も持つ屋内温水プールとして整備することで、幼児から高齢者までが利用できるようになり、市民の憩いの場として地域の活性化を創出した事例ともいえるでしょう。

出典:鹿嶋市「屋内温水プール整備事業

(6)千葉県習志野市|公共施設再生事業

本事例は、老朽化した公民館や図書館などの公共施設を統合し、新たに生涯学習施設を整備した事業です。

習志野市では、保有している公共施設の7割近くが築30年以上であることや財政状況などを考慮すると、すべての施設の修繕や更新を行うことが困難であるという課題を抱えていました。

また、地域住民のニーズに合わせた施設や行政サービスの提供が必要であるとの問題意識から、老朽化した施設を集約し、利便性の高い駅周辺の中央公園に新たな公共施設の整備を計画しました。

基本構想の策定に先立つ形で、2013(平成25)年7月に市民へ向けた説明会を開催し、その後も計画の立案・実行に至るまでの間に複数回の説明会やシンポジウムを開催し、地域住民との意見交換や情報共有を図っています。

これに加えて、民間事業者に向けて現地見学会の日程を設定し、施設の現況についての説明を行い、実態に即した施工や運営に関する計画作成を促しました。

既存の中央公園の敷地を有効活用しながら公共施設の修繕や更新に関するコストを削減しつつ、民間事業者と効果的に連携・協力し、地域住民の利便性まで高めた事例です。

出典:習志野市「大久保地区公共施設再生事業~習志野市地域の未来プロジェクト1~

(7)富山県小矢部市|統合こども園整備事業

本事例は、複数の地区に分散していた8つの保育所施設を2つのこども園として再編し、子育て支援センターを併設した事例です。

市では人口の動向や公共施設の状況を踏まえて、2018(平成30)年6月に「小矢部市公共施設再編計画」を策定していました。

そして、幼保・こども園に関しては、児童数の推移や新たな保育サービスの需要などを考慮し、統合や再編を行う方向性が策定されていました。

また、子育て支援センターを併設することにより、既存の施設では十分に対応できなかった保育サービスについても拡充を行い、地域住民や保護者に対して説明会などを開催することで理解を促しています。

これによって、保護者が持つ多様なニーズに応えることができる保育サービスを提供し、再編計画が目指していた維持管理や更新コストを抑えることができ、複数の目的を同時に満たすことができた事例です。

出典:小矢部市「統合こども園整備事業

(8)京都府京都市|学校施設の活用事業

本事例は、廃校となった小学校の施設を活用し、新たに文化施設として整備した事業です。

整備の対象となった学校施設は、1869(明治2)年に開校、当時の地域住民の寄付によって建設費が賄われていたという経緯もあり、廃校となった後もそのままの形で維持する旨の要望が寄せられていました。

市は、地域住民の要望も踏まえ、学校施設を市民ニーズの高い文化芸術施設として転用する計画を立案し、1999(平成11)年1月に着工し、翌年4月に開館に至りました。

また、地域住民の要望やニーズと向き合いながら、市が策定していた「都心部における小学校跡地の活用についての基本方針」の内容とも整合的な整備事業です。

出典:京都市「都心部小学校跡地活用の進捗状況

(9)大阪府岸和田市|福祉センター整備事業

本事例は、高齢者福祉施設の建替えに伴い、周辺の障害者支援施設や児童福祉施設の機能を集約させた新たな福祉施設を整備した事業です。

市が運営する高齢者福祉センターは、築年数が40年を経過し、老朽化が課題となっており、、地域の避難所としての側面も持つことから、建替えを行うことが検討されました。

整備にあたっては、地域福祉推進の拠点として位置づけるほか、敷地の一部が庁舎移転先の候補となっていること、周辺の施設ともあわせて複合的・多面的な施設にすることが方針の前提とされました。

分散していた障害者支援施設と児童福祉施設を集約し、市の中心駅近くに位置する環境を活かし、都市機能の集積を図った事例です。

なお、施設の建替えにあたっては、設計コンセプトや周辺環境に配慮した旨の「マスタープラン」をあらかじめ公表し、意見集約を行った上で計画の策定・実行に着手しています。

出典:岸和田市「福祉総合センターの整備について

(10)福岡県飯塚市|小中一貫校の建設事業

本事例は、老朽化が進む小学校2校、中学校1校の建替えについて、小中一貫校の建設を行うことで整備した事例です。

市では、学校施設の老朽化と人口減少に課題を抱えていました。

学校再編に関するアンケート調査を保護者や地域住民に対して実施し、そのアンケート結果を踏まえ、学校施設の適正配置や規模の最適化などを盛り込んだ再編計画に基づき、計画が実行されたのが本事例です。

新たな学校施設を建設する場所については、保護者と地域住民を中心とする検討会が主体となり、候補地の選定、意見交換、最終候補地の決定までが行われました。

建設の過程から保護者や地域住民が関わることによって、小中一貫校が開校された後の方向性についても地域全体で検討し、支えとなることが期待できる事例といえます。

出典:飯塚市「小中一貫校建設事業

2.先進事例から学ぶ公共施設マネジメントを成功させるためのポイント

上記のような、各地方公共団体の事例には、以下のような特徴が見られます。

  • 公共施設の複合化を視野に入れる
  • 住民への説明会やシンポジウムを効果的に活用する
  • 財源確保の方法を工夫する
  • 民間へのアウトソーシングを効果的に活用する

(1)公共施設の複合化を視野に入れる

公共施設の修繕や建替えなどの具体的な計画を立案する際には、周辺の施設の立地状況なども踏まえ、複合化を行うことも視野に入れましょう。

都市計画という観点では、周辺に類似の施設が建設されることも多いため、行政サービスの安定的な供給や施設の維持・更新コストを考慮に入れると、1つの施設に統合することが望ましいケースもあります。

公共施設の修繕や建替えを計画する際には、特定の施設のみを対象として検討することが多いですが、ほかの施設の立地や老朽化の状態、地域住民のニーズや利便性も考慮に入れながら多角的に検討を進めることも重要です。

そのためには、中長期的な視点で地域社会や住民ニーズを捉えるなど、「まちづくり」を俯瞰的に検討することも意識しましょう。

(2)住民への説明会やシンポジウムを効果的に活用する

施設の修繕や建替え、再編を行う場合には、適宜住民への説明会を実施して意見聴取を図るほか、シンポジウムを開催するなどして計画に対する理解と協力を醸成することが重要です。

上記で解説した事例の中にも、周辺の地域住民に丁寧な説明を数度にわたって行い、必要に応じて意見交換などの場を創出したものがあります。

公共施設マネジメントは、自治体の経営基盤を強化するものであると同時に、地域住民のニーズを充足しつつ利便性を高めるものでなければなりません。

そのため、計画の方向性や具体的な整備計画の検討・実行などの各段階で地域住民のニーズや意見、要望を集約することで、効果的な計画の推進と整備後の運営につながります。

(3)財源確保の方法を工夫する

公共施設マネジメントに基づく整備を実施する場合には、財源が必要となります。

特に人口の減少や税収の低下などによって、十分な財源が確保できないこと自体が公共施設マネジメントを推進できない原因となっているケースもあります。

そのような場合には、財源の確保を行うことが重要です。

例えば、上記の東京都新宿区の事例のように、公共施設に信託のスキームを活用することによって、安定的な財源を確保することが考えられます。

また、北海道の事例のように、公共施設の統合や有効活用の1つとして、庁舎の共有スペースを貸し出して賃料収入を得ることで財源を確保する方法も参考になります。

単に修繕や建替えなどを実施するだけにとどまらず、施設を維持したまま収益の拡大を目指す方向性もあり、多角的・多面的な活用のあり方を模索することも大切です。

(4)民間へのアウトソーシングを効果的に活用する

民間事業者との協力や委託も効果的に活用することで、施設の運営効率化や行政サービスの質向上が期待できます。

上記で取り上げた事例では、民間事業者に施工や整備後の運営を委託しているケースがほとんどです。

整備事業や施工管理、施設の運営などには専門的なノウハウを要し、庁舎内で人員を確保することが難しいケースが多いため、専門的な知見やノウハウを持つ民間事業者へのアウトソーシングを検討することで、スムーズに計画を進めることにつながります。

特に整備後の施設運営については、指定管理者制度などを活用し、民間に委託することで質の高いサービスを提供することが可能となり、利用者の利便性を高める効果も期待できるでしょう。

まとめ

本記事では、各地方公共団体が実際に取り組んだ先進的な事例の概要とポイントについて解説しました。

いずれの事例においても、施設の複合化や有効活用、地域住民との意見交換などを行い、民間事業者のノウハウなどを活かしています。

具体的な整備事業を推進する際には、本記事で解説したような事例のポイントも意識しながら効果的な計画を進めていきましょう。

監修者

黒川 雅康

総務省 経営・財務マネジメント 強化事業アドバイザー

株式会社パブリック・マネジメント・コンサルティング/上席執行役員 営業部長
2008年当社入社。地方公会計制度導入、公会計システム開発・運用に携わり、
以降、自治体における財務書類作成、公共施設マネジメント等、地域・自治体の課題解決に向けた様々な支援を行う。